天皇代替わり巡る訴訟・歴史に刻まれる意思(東京新聞 190228)

〈……前回の代替わりでも同様の訴訟が各地で起こされた。その一つ、大阪での訴訟では二審で『(政教分離に反するという)疑義は一概に否定できない』という原告側の主張をくんだ判断が示されている。しかし……護憲派の中にも、きな臭さを増す現政権に明仁天皇が抗っているという見方があり、それも異議の勢いを削いでいる。そんな空気を察知してか、裁判所は五日、口頭弁論も開かず、差し止め訴訟を却下した(原告側は控訴)。
…(集会は)…天皇個人の人格がどうであれ、制度への疑問や異議申し立てはあって当たり前ではないかという思いに貫かれていた。当然のことと思う。
 しかし、気づくと、そうしたことすら公言しにくい時代になってはいないか。現に東京では、天皇制を批判する反戦団体の車両が右翼団体に繰り返し襲撃されている。訴訟の見通しが厳しいことは予想していたという。では、なぜ提訴したのか。「私たちの言葉を公的な記録として残しておくためです」。原告の一人は静かにそう語った。〉

東京新聞20190228