即位・大嘗祭違憲訴訟の会のニュース12号です。
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何もしない、何も言わない被告側代理人
第10回口頭弁論に至るまで原告側弁護団の準備書面作成のための測り知れない労苦が積み重ねられた。
口頭弁論に先立って提出された第11準備書面において、政府が今回の代替わり諸儀式が「皇室の伝統に即した」と主張したのに対して、長い歴史において代替わり諸儀式は一様ではなく様々な変遷があったこと。登極令が定めた近代天皇制における代替わり諸儀式は、絶対的神権を持った天皇統治を現すもので、長い歴史の中でも特異なものであること。つまり、登極令に則った今回の諸儀式が「皇室の伝統に即した」とは言えないことが主張された。
第12準備書面においては、日本国憲法が定めた象徴天皇制においては、国家神道体制下の政治・道徳・精神的権威を「神道指令」が排除させた延長線上にあり、天皇の地位と役割は憲法の定める国事行為に極めて制限されたものであって、天皇が行う「儀式」も宗教性が入り込む余地のないことが主張された。
第13準備書面においては、日本国憲法の政教分離原則と象徴天皇制との関係において今回の代替わり諸儀式が逸脱したものであったことを皇室財政との関係においても説明した。この三つの準備書面を合わせると堂々129頁に渡る超大作。まさに弁護団の血と汗と涙の結晶である。本当に頭が下がる。
それに対して、被告側代理人は何もしない、何も言わない。第10回口頭弁論においても準備書面11-13の要点が原告側弁護団から主張され、裁判長も、「では、一通り原告側の概ねの主張が出たわけですので、次回は、被告側からこれらの主張に対して認否を含めて主張されるということでよろしいですか?」と問うと、被告(国)側は、「今のところ何らかの主張は予定しておりません」と臆面もなく答える。絶句した。今までも何も主張しない、答えない様は異様であったが、今回の口頭弁論も5人も雁首を揃えて、何も主張する予定はないと。さすがの裁判長も「まあ、そうは言っても、せめて法律論の主張の認否については検討をしてもらえませんか」とお願いする。それでも被告側は「検討します」と言うのみ。
原告側は何冊も本を読み、念入りな主張を整えるために、準備書面を期日まで間に合わせようと血を吐くほどの労苦を重ねた。きっと連日徹夜だったのではと思う。ところが向こうは何もする気もない。
閉廷後の報告集会で、なぜ、国側は、何も主張もしないのだろうか、との質問が相次いだ。弁護団の説明は「何もしないでも勝てると思っているので、立ち入る必要はない、と思っているのだろう」とのこと。要は「どうせ判事は、大それた判決を書く気もないだろうから、黙っていよう」と、初めから何もしないと決めてかかっている、ということ。これで被告代理人に税金から高給が支払われるのかと思うと、理不尽極まりないと思った。
口頭弁論前に裁判所前で、裁判のアピールをしていると公安警察が5人も勢揃いして、私たちの記録をあからさまにメモに取り威嚇をした。法廷が終わった後には、裁判所ロビー内にまで公安は入って来て、私たちの動向を追っていた。あの人たちも税金で雇われて、公務員としての貴重な時間を使って、私たち市民の監視をしていると思うと、何とも言えない気になった。
原告は手弁当で、交通費も自腹で沖縄から、遠くから駆けつける。弁護団もほぼ雀の涙程度の報酬で、計り知れない労苦を重ねる。向こうはメモをとって高給。何もしないで黙っていて高給を得る。しかも私たちの税金から。政府が不要だとは言うつもりもないが、こんなことをやっている政府は心から不要だと思った。
(星出卓也=原告)