抗議声明・「即位・大嘗祭違憲訴訟(国家賠償請求裁判)」不当判決に抗議する

抗議声明
「即位・大嘗祭違憲訴訟(国家賠償請求裁判)」不当判決に抗議する

 本日、東京地裁民事第 6 部・中島崇裁判長は、「即位・大嘗祭違憲訴訟」の国家賠償請求事件部分に対し、棄却判決を言い渡した。
 私たちはこの不当判決に対して強く抗議するものである。
 私たちが提起した本訴訟は、2019 年に強行されてしまった「即位の礼・大嘗祭」をはじめとする一連の天皇の「代替わり」儀式が、日本国憲法の政教分離、主権在民原則に対する重大な違反行為であることから、「納税者基本権」と「基本的人格権」に基づいて、一連の儀式への違法な国費支出差し止めと、当該儀式がもたらす人格権侵害に対する国家賠償を求めて、2018年に提訴したものである。これに、「代替わり」関連の儀式である 2020 年の「立皇嗣の礼」についても新たに提訴し、本訴に併合された。
 しかし裁判所は、私たちが一体のものとして提起した裁判を勝手に分離し、とりわけ「納税者基本権に基づく差止訴訟」部分に関しては、一度の口頭弁論も開かれないまま、却下・棄却させられてしまった。そして、「人格権に基づく差止訴訟」部分も棄却され、残りの「国家賠償請求」部分の判決が、本日言い渡されたのである。
 私たちは、何よりも国の行為について住民訴訟を提起できないことは、法の欠陥といわなければならない。
 国側は、本件諸儀式は「個々の国民」に向けられたものではなく、たとえ宗教的感情を害するものであったとしても、「具体的権利侵害」はないとする。諸儀式が個々の日本国に居住する人間に向けられたものでないならば、なぜかように多額の国費を費やしてこのような儀式を行なう必要があるというのか。儀式を行なう側は、その効果を認識しているからこそ行なうのである。
 政府の式典委員会は「各式典が、国民こぞって寿ぐ中でつつがなく挙行できるよう」に協力を求めていたし、儀式を賛美する言論はメディアを通して報道され続けた。社会的な同調圧力が大きく作りだされたのであり、まさしく祝意は強制されたのである。
 こうした国の行動を規制することが裁判所の本来の役割であるにも関わらず、裁判所は国の主張をそのまま追認し、内容に踏み込まず形式的な判断を下した。
 我々は、本件不当判決に対し強く抗議するとともに、あらためて裁判所の真摯な対応を求め、さらに闘っていくことを宣言する。
 
   2024 年 1 月 31 日
           即位・大嘗祭違憲訴訟の会
           即位・大嘗祭違憲訴訟弁護団

即位・大嘗祭違憲訴訟の会NEWS No.21

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即位・大嘗祭違憲訴訟判決言渡し
秒殺判決、憲法判断なし、内容なし

 1 月 31 日(水)、「即位礼・大嘗祭違憲訴訟」東京地裁判決が第 103 号法廷で言い渡されました。判決は秒殺ともいえる、ほんの数秒で片付けられてしまいました。「原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の自己負担とする」、以上。時間にして 5 秒もかからず、3 名の裁判官はさっさと退場。報道向けの映像撮影の時間の方がよっぽど長く、まさに吐き捨てられたような判決でした。これが 5 年も闘ってきた結果か、と思うと疲れがどっと出る一時でした。
 それでも判決内容を注意深く読めば、憲法判断などが少しでも次の足掛かりとなるものが残されているかとの期待も見事に裏切られて、読むだけ損したような内容無し、憲法判断もなしの空っぽ判決でした。判決要旨を記者会見用にコピーに走りましたが、コピーする価値もないような残念判決でした。1 か所を抜粋すると以下の通り。
 「政教分離原則を定める憲法の規定は、いわゆる制度的保障の規定であって、私人に対して信教の自由を直接保障するものではなく……国家と宗教との分離を制度として保障することによって間接的に信教の自由の保障をしようとするものであって……、政教分離原則に違反した国の行為が直ちに私人の信教の自由を侵害したということもできない……」
 何とも煙に巻かれたような、何を言いたいのかも不明な空っぽの判決でした。
 この 5 年間、主張するのは原告側ばかりで、被告の国側は、何も言わない、何もしない、主張すらしないが一貫していました。原告側の準備書面は毎回 100 頁を越える超大作。しかし被告側はほぼ準備書面を出さない。出しても紙ぺら 1 枚か 2 枚のお粗末なもの。「この点は争う」と被告側は準備書面には書きながらも、争った形跡すら残しませんでした。原告の本人尋問にも、何一つ反対尋問すら一言もなかった。被告側代理人はただ座っていただけで、「追って書面で回答します」と言うだけ。まともな回答をしないまま、だんまりを通しました。あの何もしない余裕の態度は、どうせ裁判官が、さっさと却下してくれるだろうから、何もしないのが一番、と高を括った態度でした。被告側の代理人の希望通りに、裁判所は憲法判断すらしませんでした。まるで被告国と裁判所で申し合わせたような見事な連係プレーを疑うのは私だけでありましょうか。この国の司法の独立はいつから葬られてしまったのか。三権分立ならぬ、三位一体になってしまったのか……。
 裁判所前に出された垂れ幕は「不当判決弾劾!」「控訴審で闘おう」。準備していた通りが役に立ってしまった何とも言えない悔しさを胸に、控訴審の委任状を整理しました。見通しが全く見えなくとも、これでやめるわけにはいかないのです。おかしいことをおかしいという人がいなければ、おかしいことが認められたことになってしまうのです。当日の報告集会は 30 名以上の原告たちが熱い論議を交わしました。同じ不屈の思いを込めた控訴委任状が一つ一つ届くごとに、思いを共にする人々との繋がりにとても励まされました。と同時に亡くなられたあの方、この方の原告の名前を見る時に目頭が熱くなりました。委任状を出すことが許されなかった名前を見るたびに「私の分も頼んだよ」と言われたように思いました。
 控訴審に良き足掛かりを残せることを祈って、聖書の一節に思いを託して終わります。
 「これらの人たちは信仰の人として死にました。約束のものを手に入れることはありませんでしたが、はるか遠くにそれを見て喜び迎え、地上では旅人であり、寄留者であることを告白していました」(へブル人への手紙 11 章 13 節)。

 

即位・大嘗祭違憲訴訟の会NEWS No.20

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即位・大嘗祭違憲訴訟結審
来年 1 月 31 日、判決言い渡し

 いまはもう遠い昔でもある裕仁から明仁への代替わり過程は、とんでもなく強圧的なこの日本国家の政治や社会体制を、否応もなく感じさせるものでした。多くの人びとをさまざまな経過で死に追いやった天皇は、自らの死に臨んでも意味あることを語らず、隠蔽と虚飾の代替わりを迎えました。
 明仁はこの代替わりの経過を好まなかったようで、自分の死による代替わりでなく意識的な「退位」による天皇の地位の移譲をはかりました。それが今回の明仁「平成」から徳仁「令和」への代替わりのプロセスでした。前回のような社会全体への強制は影を潜めたが、しかし今回もまた、政教分離や人民主権などに反する違憲・違法な儀式が挙行されるのは明らかであったので、多くの人びとがこれを差し止めようとしたのがこの訴訟であり、その後、代替わり儀式の強行に対する国賠請求も加えて一体のものとして取り組まれたのです。多くの原告の思いをぶつけていく内容が繰り広げられたことで、自分にとって、学んだこともまた幅広くかつ深いものだったと感じます。
 とはいえ、5年の長きにわたる裁判で、10 月 11 日に行われた当裁判の結審に集った原告の数は、それほど多いものではなかったのは仕方がないことながら残念でした。
 今回は、原告代表として佐野通夫さんが意見陳述を行いました。概略は以下の通り。
1、裁判所が代替わり差し止め訴訟を弁論も抜きに門前払いで敗訴させたことへの抗議。
2、今回の「即位」が、明仁のビデオメッセージにはじまり、これを受けた天皇に対するキテレツな敬語にまみれたいわゆる「退位特例法」の制定によって形づくられたことへの批判。
3、「即位の礼・大嘗祭」が憲法における政教分離と主権在民原則に反するものであることへの批判。
 陳述のなかの白眉は、ほんらい天皇に可能な法的行為は、憲法上の国事行為とされるもの以外にはないにもかかわらず、「象徴としての行為」なるものを明仁のコトバのままに認定していることの問題性・危険性を述べたところです。「象徴天皇」の役割・機能は、きちんと制限されねばならず、例えるならば「おさるの電車」のサルのようなものとして勝手な行動をとることは許されないとしました。この意見陳述では、大日本帝国憲法において天皇が有した権力が不正に行使された例として、関東大震災に際して緊急勅令として発された戒厳令がきわめて悲惨な虐殺までもたらしたことを例示しつつ、天皇の権力の歯止めを緩め外そうとする動きに対して厳しい批判と警告を発しました。
 引きつづきなされた弁護団の意見陳述では、「世襲」天皇の「儀式」である即位礼・大嘗祭が、正しく公的な意味を持ち、宗教的にも問題のない「国家儀礼」とされていることへの批判がなされ、この裁判の判決が、明確な違憲性の指摘という憲法判断を含むものでなくてはならないということが強調され、司法が行政に対するチェック機能を果たすべきであるという指摘で結ばれました。
 裁判の後、報告集会が持たれ、この日の要点が説明されました。その場での傍聴参加者からのメッセージを端折りながらいくつかご紹介します。
力の出る法廷でした / 被告側反論はついに無くてさびしい限り / (原告・弁護団の陳述は)すばらしい憲法論だったと思います。人民の側に立った憲法論を発展された / 陳述、弁論は大変力強い。論旨的にしっかりした論述に感銘を受けました / 今回の陳述を今後の活動に大いに活用したいと思いました / 国側の反論を聞けなかったことは残念。裁判所が、国側の反論を何も聞かないで判決言い渡しをすることは異常 / ……国家権力の暴走を止める運動に敬意をささげます / 皆様お疲れ様です。陳述すばらしかったです。象徴天皇の『象徴』とは、お猿電車の猿や、猫のタマ駅長の役割に近いということ、なるほどでした
 1月 31 日 15 時、地裁 103 法廷での判決に多くの原告が集まられることを!

 

即位・大嘗祭違憲訴訟の会NEWS No.19

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いよいよ最終弁論、結審へ
第 17 回口頭弁論に集まろう!

 2018 年 12 月 10 日に東京地裁に提訴した「即位礼・大嘗祭違憲訴訟」も 4 年半の年月を経て、今年 2023年 10 月 11 日午後 2 時開廷の第 17 回口頭弁論にて結審となります。
 この 4 年半の裁判を振り返って、不可解なことが沢山ありました。一つは裁判所の謎の対応です。この裁判は、幾つもの訴訟に分かれ、分割されたという不思議な道を辿りました。幾つも分割されたのでフローチャートを作成しなければ今回の口頭弁論はどこの裁判のどの段階を審理するものなのかが理解できないほどでした。
 当初提訴した内容は、即位の礼・大嘗祭等の差止と、即位の礼・大嘗祭等に国費を支出することに関する国賠訴訟の両方で、この事件は一般事件を取り扱う民事10 部に係属することになりましたが、提訴からわずか10 日後に裁判所より「差止訴訟に関しては分離されたのでお知らせする」との連絡があり、差止部分は行政裁判を扱う 38 部に係属するとの突然の連絡。私ども原告側は、一体として裁判を進める方針であったので、行政部で一般事件を扱えるので 38 部で併合審議してもらいたいと 1 月 15 日に申立書を提出するもなかなか返事がない。すると突然に 2 月 5 日に民事 38部から「本日、却下の判決を下した」という連絡が届き、一体何のことかと呆気にとられました。一度も口頭弁論が開かれず、判決すらも紙切れ一枚が郵送で届く。却下とは、手続き上明白な瑕疵がある場合に門前払いを食わす手続きとのこと。今回は手続き上の瑕疵など何もありません。
 その後も高裁に控訴、最高裁に上告するも 4 月 17日に高裁控訴棄却、10 月 1 日に最高裁は上告棄却と、あっという間に即位礼正殿の儀や大嘗祭が始まる時に片付けられてしまいました。即位礼が行われる時に差止を争うなど面倒なことにならないように、早急に片付けて、即位礼が始まる時には差止の裁判が話題にならないようにという、政府と裁判所が一体の策を練ったと疑わざるを得ないような対応を手続き論でやられたという感じでした。裁判が分離された、という時点で、いやな予感でしたが、そういうことだったのかと思いました。
 ちなみに差止は第二次訴訟も並行して争われて、こちらも地裁は口頭弁論も開かれずに却下、「畏れ多くも即位礼を差し止めるなどケシカラン」との意図を感じました。高裁もスピード感をもって片付けられるかと思いきや、二次訴訟高裁は、一応は口頭弁論を開きましたが一回で結審。しかし 2019 年 12 月 24 日の高裁判決は「地裁原判決を破棄差し戻し」を求めました。私はさすがに仕事柄 12 月 24 日クリスマスには裁判所には行けませんでしたが、この裁判での唯一のグッドニュースでした。理由は「人格権に基づく請求については判断していないので、手続き上法令違反にあたる」とのこと。手続きを問題にしただけのこととのことですが、スピード棄却されるよりはましでした。しかし、その後、幾つも訴訟が分離される複雑怪奇な道を辿りました。裁判所はコロナ禍を理由に裁判を開かない。そうこうしているうちに、あらゆる儀式が終わり、差止めどころではなくなる。唯一残った立皇嗣の礼だけが首の皮一枚繋がった差止対象でした。そのため原告側も 、 立皇嗣の礼が終わると差止めの事実そのものが無くなるため、腰を落ち着けた論戦ができないまま終わりました。変な手続きで真綿に首を絞められた感じでした。
 もう一つは、被告の国が何も主張しないこと。何も言わない、何も論じない。放置しておけば、裁判所は却下してくれると高を括っているのと、論議すればするほど国が宗教行事をしている問題が明らかになり分が悪くなるので、原告本人尋問でも何も問わない、何も聞かない。かくして地裁は結審を迎えます。状況が良くても悪くても、諦めるわけにはいかない戦いを終わりまでご一緒に見届けましょう。

 

即位・大嘗祭違憲訴訟の会NEWS No.18

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原告 12 人、本人尋問で裁判所に迫る
第 15・16 回口頭弁論報告

 5 月 31 日(水)、6 月 21 日(同)の両日、それぞれ約 2 時間半の枠をとって、合計 12 人の原告が、弁護団の質問に答える形で、直接裁判長に自分の意見を表明する「原告本人尋問」がおこなわれました。
 証人関係にたいする裁判所の姿勢は、専門家証人(ないし補佐人)ならびに当事者以外の被害証言者に関しては却下、原告本人については申請した 17 人のうち、12人を採用するというものでした。前者に対しては、弁護団はもとより、原告団としても「学者証人の採用を求める申入書」を、5 月 22 日に裁判所に対しておこないましたが、6 月 21 日の弁論で裁判所は、申請却下を正式に宣告しました。
 前回お知らせしたとおり、原告本人尋問の 1 回目は宗教者など、政教分離や内心の自由の侵害という視点が強く押し出される内容になり、2 回目(6 月 21 日)は象徴天皇制論や運動の現場における弾圧(公安のつきまといなど)被害の実態などが前面に出る内容となりました。
 本人尋問の実施をふまえ、原告としては最終意見陳述に臨むことになり、本裁判の終結も見えてきました。この 2 回の法廷は、満員とまではいきませんでしたが、ここ何回かに比べれば多くの傍聴があり、報告集会も立ち見が出ました。引き続き傍聴をよろしくお願いします。
● 5 月 31 日(第 15 回口頭弁論)
原告
 森田麻里子
 小畑太作
 鳥谷治彦
 木村眞昭
 渡辺真哉
 星出卓也
● 6 月 21 日(第 16 回口頭弁論)
原告
 井上森
 天野恵一
 根津公子
 岡田良子
 新孝一
 桜井大子

即位・大嘗祭違憲訴訟の会NEWS No.17

即位・大嘗祭違憲訴訟の会のニュース17号です。
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原告 12 人の本人尋問(2期日)決定
第 14 回口頭弁論報告

 2 月におこなわれた第 13 回口頭弁論において、弁護団は原告・学者・被害当事者証人についての人証申請をおこなった。そのときのやりとりでも、すでに意向としては示されていたことだが、中島崇裁判長は、原告本人の証人尋問は認めるが、学者およびその他の証人に関しては「陳述書」で十分であり、直接口頭での証言は必要ないという姿勢に終始した。
 弁護団では、引き続きそれらの申請を要求するとともに、学者専門家について、「原告補佐人」という形であらためて申請するという手段をとった。専門家がその知見をもって、原告を「補佐」することができる制度を使おうということであり、他の裁判では採用されたりしているそうだ。これに対して被告・国側は早々に、それは原告に「障害」があるとか、知財関係の事件など特別な事情がある場合に限られるとの、きわめて狭い解釈をして、今回の件では不要であるとの上申書を出してきた。
 そうした流れの中で、4 月 7 日に、裁判官、被告代理人、原告代理人と原告当事者が一堂に会して進行協議がもたれた。
 私たちはそこで、17 人の原告当事者の尋問と、あわせて 3 人の補佐人の陳述を求め、原告当事者の尋問だけでも、3期日は必要であるとした。補佐人に関しては、裁判長は「本件においては必須ではない」「採用については裁判所の裁量」と言う。弁護団は、民訴法の条文や研究書において、そのような狭い解釈がとられていないはずだと抗議。また、原告からも「書面で十分だと言うが、法廷の場で、口頭で主張を述べることに意味がある」と反論。最終的に裁判所は、「合議はするが難しい」という立場を崩さなかった。
 原告本人の尋問に関しては、一回 150 分(原告側尋問130分、反対尋問および手続き関係20分)で2期日、その枠内で人選するということで、ほぼ合意した。
 4 月 12 日、第 14 回口頭弁論。今回から右陪席が交代し、裁判体が変更になったため、更新弁論がおこなわれ、第 18 〜 21 準備書面があらためて陳述された。木村庸五弁護士(書面 19)は、憲法訴訟の意義、多数決原理にそぐわない少数者の利益の「防火壁」としての政教分離原則について陳述。土田元哉弁護士(書面18)は、天皇即位を祝う「国民祭典」が、宗教性と動員の機能を濃厚に持つ儀式であり、民間式典と言いながら明確に国が関与したものであることを問題にした。浅野史生弁護士(書面 20、21)は、天皇制イデオロギーの歴史を整理し、それが社会的タブーを組織し、政治的弾圧を招いていることを批判、あわせて政教分離訴訟における論点を再確認した。
 その後証拠調べに移る。人証に関しては、原告本人は 2 期日、弾圧当事者 2 名は採用せず、専門家に関しては補佐人としては採用せず、証人としては後日弁護団から提出予定の書面を見てから判断する、ということになった。

 

即位・大嘗祭違憲訴訟の会NEWS No.16

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裁判所はすべての証人を採用せよ!
第 13 回口頭弁論報告

 2 月 13 日、国賠訴訟 13 回目の口頭弁論が東京地裁 103 号法廷にて開かれた。この日は寒いうえに雨というあいにくな天気だった。それも災いしてか、加えて原告のうち4人は傍聴席ではなく柵内に入っていて、傍聴席は 20 数人とさびしかった。おそらくこれまでで一番少なかったのではないだろうか。次回は満席になってほしい。法廷自体は「打ち合わせ」的なやりとりが続き、短い時間で終了。雨のため、裁判所前の情宣も中止となった。
 原告側の弁護団が出した膨大な書面の確認で、ページをめくる音とひそひそ声だけが聞こえる時間が長く感じられる。そんな中、私たちの弁護団は証人尋問の必要性を裁判官に粘り強く訴えてくれた。しかし、裁判官は原告の陳述や尋問の必要性は認めるが、学者証人や原告外の陳述は書面だけで十分であり陳述・尋問は不要という判断を示した。
 これまで陳述・尋問の実現については未確定のまま、弁護団は多忙な中で意見聴取や法廷での証言の要請、書面作成など準備を進めてきた。多くの時間とエネルギーを費やして提出された書面を裁判官や被告に読ませるだけでは本当にもったいなさすぎる。原告や要請を受けてくれた証人たちの、法廷で直接口述し訴える声・言葉を傍聴席で聞きたいし、傍聴席に座る原告・支援者にはその権利があるはずだ。ぜひその場で共有したいと切望する。
 法廷終了後は日比谷図書文化館に移動し、報告集会。実際に裁判を傍聴していてもわからないことが多く、この報告集会は裁判の状況を適切に把握できる唯一の場ともいえる。その日の裁判で何がやりとりされ、その結果どのような状況に至っているのかなど弁護団から説明を受け、会場からの質問や意見に応えてくれる場だ。
 この日もこの間の裁判の経緯や今後の流れについて弁護団から簡単に説明があり、提出された準備書面の内容説明も受けた。政教分離原則がもつ「保護される権利」「建国神話」・「記紀神話」の問題など、違憲性につながる部分を広く深く展開されていることがよくわかった。そして違憲の「祭典」として新しく取り上げられた「国民祭典」について、民間主催とはいえその民間団体の一つが多くの国会議員など政治家たちによって構成されていること、各省庁が後援という形で関与していること、「記紀神話」に基づく「建国神話」を現天皇の水研究に繋げながら紹介しているスライドショーなど、その違憲性を追及していくことの説明がなされた。
 また、「国民こぞって祝う」ことを当たり前とする一方で、そういった天皇制のあり方に異議申し立てする人々への弾圧がたびたび起こされている。そういった「天皇弾圧」とも呼ばれる事件が、即位・大嘗祭の一連の儀式の違憲性を立証するものであるとして取り上げられ、当事者尋問も準備されていることなど解説がなされた。とても画期的なことだと思う。
 裁判はいよいよ違憲立証に深く踏み込み、追及する場となっていく。どうぞ、お見逃しなく!そして、傍聴席を埋めつくし、裁判官に、いい加減な判断はできないという空気を感じとらさせていきたい。

 

23年4~6月の期日が決まりました

みなさま
即位大嘗祭違憲訴訟の次回期日は以下の通りです。

1)4月12日(水) 11時から 103号法廷
原告・学者証人尋問期日(予定)
2)5月31日(水) 14時から 103号法廷
3)6月21日(水) 14時から 103号法廷

弁護団・原告団はただいま鋭意準備中です。傍聴行動にご参加ください!

即位・大嘗祭違憲訴訟の会NEWS No.15

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原告・弾圧当事者・専門家証人を申請

 前回 9 月 21 日の第 12 回口頭弁論期日において、今後の裁判進行について以下のような協議がなされました。
 原告側主張については大筋出されているが、追加の書面を出す(歴史的経緯等に関する主張の補充、政教分離訴訟に関する過去の判例と今回の実態との比較など)。また証人として、専門家、原告、天皇制弾圧当事者について人選しているところである。被告側が求釈明に答えない状況が続いているので、最終的には確定しきれない部分があるが、書面と人証申請など、11 月末までにできる限り出す。
 以上のようなスケジュールに基づき、弁護団は奮闘しています。追加の主張、原告及び弾圧当事者の証人候補者の選定を予定通りに終えて、現在、それらに関する証拠書類等の準備、陳述書に基づく立証趣旨・尋問事項の検討などを進めています。さらに、専門家へのヒアリングや意見書執筆依頼に関しても、着々と作業を進めているところです。
●陳述書をお寄せ下さい
 とはいえ、原告の天皇制批判に対する思いはさまざまであり、したがってそれを反映した主張・さらにはその立証についても、多様なものとならざるを得ません(この訴訟では、国賠分に限っても、すでに 16 本の準備書面が提出されています)。裁判所から、主張は十分尽くしただろうなどと言われても、正直、そうだと言い切れない部分が残ります。
 ここで、原告の皆さんには、ぜひとも陳述書を書いて送ってくださるよう、再度訴えます。
 字数に制限はありません。短いものでも構いません。内容は原告としての思いを自由にお書き下さい。ワードなどのデータを、事務局宛てにメールなどでお送りください(e-mail: sokudai@mail.zhizhi.net、郵送の場合は〒 202-0022 東京都西東京市柳沢 2-11-13 即位・大嘗祭違憲訴訟の会)。原告の多様な声が、裁判所に対する圧力ともなります。今月中にいただいたものを、まとめて次回弁論の場に提出したいと思います。
 裁判はいよいよ後半戦に向かっています。引き続き、本訴訟への注目をお願いします。

即位・大嘗祭違憲訴訟の会NEWS No.14

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求釈明に応えようとしない被告側を批判
第 12 回口頭弁論報告

 9 月 21 日(水)は国家賠償請求裁判第 12 回口頭弁論期日。はじめに原告側から、今回提出の準備書面 15、16 の要旨を簡単に述べた。
・吉田哲也弁護士の準備書面 15 要旨陳述 
 《立皇嗣の礼は旧皇室典範の立儲令に準拠した高度に宗教的行為だった。これを公金で行ったことの違憲性》と、《皇居前広場で行われた「天皇即位を祝う国民祭典」を、「国民こぞってお祝いする」観点で国が称揚し後援した違法と、会場に天皇夫妻が来て挨拶する演出に国はどう関与したか》を問うたのに対し、被告側答弁は「違法は原告らの法的主張にすぎない、と解した上で争う」だった。しかるに未だ沈黙したまま被告側の認否がない。「国民こぞって祝う」のは天皇権威を認めさせる ” 同調圧力 ” となり、思想良心の自由の侵害になる。被告が改めて求釈明に応じるよう要請する。
・浅野史生弁護士の準備書面 16 要旨陳述 
 《天皇制と身分秩序》について、明治以来政府が万世一系の世襲天皇制で血統差別・身分差別を定め人民支配に利用してきた歴史を述べる。祖先を天照大神とする天皇を「大家長」に位置づけ、民衆はその下で家父長制の家族道徳を教育され、日本独特の国家家族観あるいは「家」制度国家観を国民支配のイデオロギーとした。天皇制が血統差別、身分差別の根源となり、家父長制による家族内差別、本家分家差別など様々な差別社会が定着した。政府は、家父長制の「家」を社会の構成単位とし、戸籍制度により個人を家単位で登録、家族集団で個人をしばり支配した。こうした天皇制による国民支配服従の国家秩序を、戦後改廃して基本的人権と国民主権を原則とする現憲法が制定された。だのに相変わらず天皇を神聖血統の家長と尊崇させるような一連の代替わり儀式挙行は違憲違法であると主張した。《天皇と差別》の関連はさらに深めたいので、追加の準備書面提出を考えている。