即位・大嘗祭違憲訴訟の会NEWS No.13

即位・大嘗祭違憲訴訟の会のニュース13号です。
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再度の裁判官交代と「弁論の更新」
第 11 回口頭弁論報告

 5月23日(月)、東京地裁103号法廷で国家賠償請求裁判第11回口頭弁論が開廷された。今回も開廷に先立ち裁判所前で、30分ほどの情宣活動を原告団有志で行った。最終的には10名ほどが集まり、昨年作ったリーフレット『「即位大嘗祭違憲訴訟」とは』を配ったりした。スピーチなしで、ただ横断幕を広げ、「天皇の即位大嘗祭違憲訴訟をやっています」などと小声で言いながらリーフを配るだけの行動だ。だけど、ごく僅かだけど必ずいる、受け取ってリーフを開きながら去っていく人の後ろ姿を確認するたびに、毎回やることに意味があるように思えてくる。これがなければ、こうやって裁判とは無関係の人にリーフを手渡すこともないのだ。めげずにこれも続けたい。  さて、本題の裁判。またしても裁判長が交代した(武藤貴明裁判長から中島崇裁判長へ)。今回は期日前に弁護団に連絡が入ったらしい。こんな当たり前の連絡がなされなかった経験をもつ私たち訴訟団は、これだけをもってしても、この国の司法への信頼など持てないままにいる。そして第11回目の弁論。弁護団は新しい裁判官に対して「更新弁論」を主張し、10回分の主張(膨大な書面の数々と弁論)を20分か30分程度でまとめた。それは私たち傍聴席にいた原告にとっては復習の機会ともなり、よかったのではないかと思う。  まず酒田弁護士から更新弁論を行うことが伝えられ、象徴天皇制と政教分離についてにはじまって、大きくは3点について、吉田弁護士、土田弁護士、浅野弁護士からそれぞれ弁論が展開された。

即位・大嘗祭違憲訴訟の会NEWS No.12

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何もしない、何も言わない被告側代理人

 第10回口頭弁論に至るまで原告側弁護団の準備書面作成のための測り知れない労苦が積み重ねられた。
 口頭弁論に先立って提出された第11準備書面において、政府が今回の代替わり諸儀式が「皇室の伝統に即した」と主張したのに対して、長い歴史において代替わり諸儀式は一様ではなく様々な変遷があったこと登極令が定めた近代天皇制における代替わり諸儀式は、絶対的神権を持った天皇統治を現すもので、長い歴史の中でも特異なものであることつまり、登極令に則った今回の諸儀式が「皇室の伝統に即した」とは言えないことが主張された。
 第12準備書面においては、日本国憲法が定めた象徴天皇制においては国家神道体制下の政治・道徳・精神的権威を「神道指令」が排除させた延長線上にあり、天皇の地位と役割は憲法の定める国事行為に極めて制限されたものであって、天皇が行う「儀式」も宗教性が入り込む余地のないことが主張された。
 第13準備書面においては、日本国憲法の政教分離原則と象徴天皇制との関係において今回の代替わり諸儀式が逸脱したものであったことを皇室財政との関係においても説明した。この三つの準備書面を合わせると堂々129頁に渡る超大作。まさに弁護団の血と汗と涙の結晶である。本当に頭が下がる。
 それに対して、被告側代理人は何もしない、何も言わない。第10回口頭弁論においても準備書面11-13の要点が原告側弁護団から主張され、裁判長も、「では、一通り原告側の概ねの主張が出たわけですので、次回は、被告側からこれらの主張に対して認否を含めて主張されるということでよろしいですか?」と問うと、被告(国)側は、「今のところ何らかの主張は予定しておりません」と臆面もなく答える。絶句した。今までも何も主張しない、答えない様は異様であったが、今回の口頭弁論も5人も雁首を揃えて、何も主張する予定はないと。さすがの裁判長も「まあ、そうは言っても、せめて法律論の主張の認否については検討をしてもらえませんか」とお願いする。それでも被告側は「検討します」と言うのみ。
 原告側は何冊も本を読み、念入りな主張を整えるために、準備書面を期日まで間に合わせようと血を吐くほどの労苦を重ねた。きっと連日徹夜だったのではと思う。ところが向こうは何もする気もない。
 閉廷後の報告集会で、なぜ、国側は、何も主張もしないのだろうか、との質問が相次いだ。弁護団の説明は「何もしないでも勝てると思っているので、立ち入る必要はない、と思っているのだろう」とのこと。要は「どうせ判事は、大それた判決を書く気もないだろうから、黙っていよう」と、初めから何もしないと決めてかかっている、ということ。これで被告代理人に税金から高給が支払われるのかと思うと、理不尽極まりないと思った。
 口頭弁論前に裁判所前で、裁判のアピールをしていると公安警察が5人も勢揃いして、私たちの記録をあからさまにメモに取り威嚇をした。法廷が終わった後には、裁判所ロビー内にまで公安は入って来て、私たちの動向を追っていた。あの人たちも税金で雇われて、公務員としての貴重な時間を使って、私たち市民の監視をしていると思うと、何とも言えない気になった。
 原告は手弁当で、交通費も自腹で沖縄から、遠くから駆けつける。弁護団もほぼ雀の涙程度の報酬で、計り知れない労苦を重ねる。向こうはメモをとって高給。何もしないで黙っていて高給を得る。しかも私たちの税金から。政府が不要だとは言うつもりもないが、こんなことをやっている政府は心から不要だと思った。
(星出卓也=原告)

即位・大嘗祭違憲訴訟の会NEWS No.10

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歴史を遡って徹底論議に臨む

 7月5日に開かれた第8回口頭弁論(国賠部分)に先立って、原告側弁護団は「第八準備書面」を7月2日に提出しました。「各論の補充」のタイトル、その内容は、戦前に遡る天皇制の果たした役割。具体的には侵略戦争に駆り立てた天皇制ファシズムを歴史を追って明らかにするものです。天皇代替わり諸儀式の問題を、2019年〜2020年に行われた儀式だけを見ていたのでは、問題の所在がわかりません。なぜ、戦後に政教分離原則が定められたのか。なぜ国家が宗教に関わることを厳格に禁止しなければならなかったのか。その理由が、即位儀式が行われた「今」を見るだけでは見えないからです。侵略戦争へと日本中を駆り立てた天皇制ファシズムは、今も戦前と断絶せず、象徴天皇制において継続され、連続していることを理解する時、問題の本質が見えて来ます。
 そのために、歴史を振り返る膨大な作業に取り掛かったのが 第八準備書面です。

 その目次は「天皇の戦争責任」、「天皇制ファシズムと教育勅語」、「天皇と『祝日』・元号・『日の丸』・『君が代』」、「三種の神器」。これで終わりではなく、これが始まり。今も連続する天皇制問題への取り組みへの膨大な作業が始まりました。さて問題は、裁判官が、これをどこまで取り上げてくれるか。「今の即位儀式に直接関係がない。」と、訴訟指揮の名目で切り捨てられないか、というところです。
 法廷当日は、20分程度の短い時間ながら、「なるべく早く片付けたい」と画策する裁判官と、「そう簡単に済む問題ではありませんよ」と粘る原告側の熾烈な駆け引きが繰り広げられました。